長い歴史と伝統の中で生まれて来た住まい、土台・柱・梁等を組み合わせて建築されたのが在来工法で、耐久性や美観に於いてもこの工法に優る建築はないでしょう。
時には丸太を使用した数奇屋造り・書院造りと種々の家も楽しめます。
又瓦・壁・畳・建具等に於いてもそれぞれの特長があります。
在来工法で最も美観、バランスの取れる屋根は、日本瓦、銅板屋根でしょう。
瓦は粘土、土を焼き上げたもので直射日光を受けても、熱伝導は低く、更に調湿性を備え耐火性にも耐久性にも優れ木造建築には、最も馴んだ屋根材とされていますが、形状としては、本葺瓦・桟葺瓦・一文字瓦その他いくつかの形状や葺き方もありますが建物によって瓦や葺き方が選択されてきます。
昔の施工は、屋根に土をのせその土で瓦を馴じませたものですが、今日の施行法は防水シートを敷き、引掛桟と言う桟を打ち付けそれに瓦を掛け釘締めの工法とされているので、先ず落ちる危険は少なく、生活の上では落ち着いた美観、快適な住まいとなります。
その昔から人は、土と共に生して来ました。
洞窟の暮らし、竪穴に住まいを移し、土壁をつくり焼いた土で屋根を葺き、更に時代が進んで石灰を原料とする漆喰は、法隆寺以来の建築や江戸時代に至る城郭、民家の壁、土蔵など塗装は、古来より使用されて居ります。
特に土蔵は、その土壁の厚さに依り、四季の温度、湿度を一定に保ち、大きな天災にも人々の財産を守ってきました。日本の伝統的な木軸組工法における、木と、日本瓦と、塗壁との調和は、日本の建築美の象徴ともいえます。
日本の気候風土に適した調湿性を備えていると共に、耐火性、耐久性、意匠性にも優れています。しかし、いつの間にか住まいとその周りからは、塗壁が消えその本来の役割であった住宅内の呼性が失われつつあります。
我々は、その塗壁に優れた特性と自然や人々に対する優しさに古来から知恵を授けてくれた呼吸する塗壁を提案いたします。
日本人にかかせないのが床の畳です。
島国の日本では湿度が高く、それを補うのが、土壁や屋根瓦、畳等であります。
畳は、湿気の多い夏は吸湿、乾燥しやすい冬には放湿し、室内の湿度を調節するばかりか、有害な二酸化窒素を吸収し、空気を浄化する作用や、遮音性、断熱性適度な硬さ、弾力性が成長期の子供にとって背骨に最も良いと言われております。
それに一つの部屋で居間、寝室、客室等簡単に変えられる多様性も忘れる事のできない特徴でしょう。
このように、日本人の生活の知恵から生まれた優れた敷物として、最近畳の良さが見直されて、海外でも高い評価を受けております。
建具は、紙貼り障子・硝子障子・ドアなどがありますが、和風建築には紙貼り障子がかかせない。 材料は、杉・檜材の狂いのない上質な木材を使用しその場所に応じて形が考えられ、細骨組み合わせて造られるが特に書院窓や飾り窓に障子と言って細かい細工が使われてます。 紙貼り障子は組み込んだ建具に和紙を貼るわけですがそのため室内は明るく通気性も良く、自然換気と浄化性にも優れていると言う事です。 今では敷居が摩擦しないよう敷居すべり等も使用され開閉も軽く大変便利です。
襖は、日本独特の間仕切り建具である。
襖の特徴は、まず軽いこと、引き違いであること、そして表の紙を張り替えて新しく雰囲気を変えることができることなどである。
その構造は、木で組んだ格子を骨とし、画面に紙の下張りをし仕上げに紙または裏打ちをした布を張り、四周に黒またはウルミ色の漆塗りの細かい細かい縁をつけている。
この襖は、敷居にほった細い溝をガイドに左右に動き、通常二枚が引き違いに四枚が通し間の間仕切りとして組合わされて使われています。
日本の数多くの芸術、技能が代々「家」によって伝えられてきたのは有名です。世阿弥の「風姿花伝」で知られる能は、精神も型もその典型ですし、舞踊、義太夫、長唄などを含めた歌舞伎などもそうです。
歌舞伎十八番は荒事を市川團十郎家が代々伝承したものであり、能代の春慶塗も一子相伝の形となることが多いといいます。
このような伝承と言う形をとりながら、日本の伝統芸能、芸術は支えられて来たのです。
茶道もまた家元制度をとりながら、歴史を現在につないできたのです。
表千家、裏千家、武者小路千家を三千家といい、伝えるという重要な役割を果たしてきたのが家元制度でした。
茶の歴史が生み出した名工の中でも特に日本の芸術家として名を残している多くの人たちがいます。
長次郎、光悦、仁清、乾山など美術史のみならず日本歴史上でも燦然と輝いています。こうした人たちとはちょっと違いますが、茶の湯の道具をつくることを仕事とし、伝統の家職を守り継ぎながら、今日の茶道の繁栄を支えてきた工芸家達-千家十職と呼ばれる人たちがいます。
特に茶道具は「用」を第一としてつくられたものであり、いずれもきめ細かな、しっかりとしたものです。
十職とは、陶器・楽吉左衛門、釜師・大西清右衛門、塗師・中村宗哲、指物・駒沢利斎、金物・中川浄益、袋物・土田友湖、表具・奥村吉兵衛、一閑張り・飛来一閑、柄杓師・黒田清玄、風炉師・永楽善五郎の十人をいいます。
千家十職と具体的に呼ぶようになったのは、明治になってからのようです。
襖についていえば、一枚の襖を仕上げるのには、骨・縁の指物師、縁仕上げの塗師、引手の金具師、そしてそれらをまとめあげる表具師の四職が必要になります。
その他に、上貼り紙をつくるには、表具師の指示によります。表具師は宗家から預かっている版木を唐紙屋に渡し、伝承に基づいて紙、色、紋様などを指定して摺らせるのです。
現在、この仕事を受けているのが、今日との唐長です。紋様の使い方には、本来決まりがあり、俗にいう納め型というものです。
表千家残月亭に使われている大小の千家桐と青海波鱗鶴、裏千家好みの七宝四季つなぎ、壷々、武者小路千家好みの吉祥草、大渦などがその代表です。
このような紋様は千家だけでなく、東本願寺の抱き牡丹、下がり藤、知恩院の三葉葵、抱き茗荷などもそうです。
襖紙の紙、色、紋様のことでいえば、表千家の青海波鱗鶴は、生漉きの美濃紙の胡粉を引いたもの、色は萌葱色(実際には水色に見える)、版木の紋様が青海波鱗鶴となるわけです。
襖一本を仕上げるにしても、このような多くの職人の手をへて仕上げられます。
住まいの中には自然にこのような役目をしています。長い人生一生のうち半分以上は家の中にいるわけですからいかに環境に恵まれた健康住宅が必要かではないでしょうか。